相手の立場に立つ言葉に優しさを感じる
英語では、相手のところに【行く】ことを言うとき(聞き手に近づくとき)、"go" ではなく "come" を使います。
1a. Can I come to your house? (あなたの家に行ってもいい?)
逆に、一緒にいる相手と別れて、別の場所に行くとき(聞き手から離れていくとき)は "go" を使います。
1b. Can I go in? ((建物の前に相手と一緒にいて、先に中に入るとき)入ってもいい?)
沖縄弁も同様に、「行く」の意味で「来る」を使う用法があります。
2. 「今日、あなたのうちに来るからねぇ。」(あなたの家に行きます。)
沖縄弁では他にも、相手に何かをしてあげる時に「○○する?」といって、相手がする行為を代弁するような形で意思を確認するときがあります。
3a. 「これ、もらう?」 (これ、あげようか?)
3b. (食事の場面で、相手のお皿に向かって)「ソースいれる?」(ソースいれてあげようか?)
イントネーションは、疑問形でありながら、語尾が下がり、断定のようにも聞こえます。
県外から来た友人は、初めてこれを聞いたとき、自分が何かをしなければいけないのか?(3bの場合は【ソースを入れたいから、渡されるであろうソースの瓶を受け取り、自分で自分の皿にソースを入れる】ことをしなければならない)と勘違いしたそうです。
私も3aを初めて言われたときに、どう答えて良いのか、一瞬わからなかったことがありました。しかし、からくりを知ったときに、なんだか相手からの優しさを感じた気がしました。
というのも、これらは、相手から見た自分の動きを表した言葉ではないかと思うからです。そして、「相手の立場に立つ」という優しい気持ちが含まれた言葉のようにも思えるのです。
もう一つ、初めは驚いたけれど、今は好きな沖縄弁があります。
それは、沖縄に来てすぐの時に地元の子どもに言われた「教える?」(これ知ってる?教えてあげようか?)という言葉です。【教える】という行為は、聞き手の行為ではなく、話し手の行為なので、相手の立場に立っている(であろう)上の例とは違う種類かもしれません。ですが、その短い言葉に気持ちを込めたその子の得意そうな顔を、今でもこの言葉を聞く度に思い出すのです。
方言を知っていくと、そこには意味だけではなく、すぐには理解することのできないような言語の成り立ちなどの背景もたくさんあることがわかります。しかし、方言を知ることにより、それぞれの土地の人々がその言葉に込めている気持ちを知ることもできるのかもしれません。
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