心持ちが表れる
発する言葉は目には見えませんが、その言葉を受け取る側は、言葉に付随している印象や心情を汲み取り、言葉の奥にある意味までもつかもうとすることは、常々あることだと思います。
同じ言葉を使っても与える印象が違うように、同じ意味の表現も、違う言葉遣いで伝えられるということも、普段よく見られることだと思います。
どこで違いが出るのかというと、その時の言葉の使い手の心持ちだと思います。心に余裕があれば、ゆったりと優しい言葉遣いを、他のことにも心が囚われていれば、やや鋭い言葉遣いをするというのは、誰しもが経験していることではないでしょうか。
目に見えないものは、ストレートに心持ちを表すと思います。
そのことを、美術を専門に学んでいる高校生の生徒ちゃんが教えてくれた話にも感じることがありました。彼女のそれぞれの作品には、デザイン、色づけなど細部に渡って、きめ細やかな思いが込められていて、ここにはこんな気持ちがあってこの色を使ったとか、このデザインはこんなイメージで作ったとか、作成中、仕上がり後、その都度いろいろな話をしてくれます。そんな中で、1つの色が、それまで少しずつ仕上げてきた作品の行程を全てぶち壊すことがあるという話をしてくれました。締め切りに焦ったり、他の勉強で忙しかったり、仕上げに追い立てられていると、作品のイメージとは違う色をのせてしまい、それまでのイメージとは全く違うものに仕上がることがあり、残念に思うことがあるそうです。彼女曰く、無意識のうちに焦って色づけされている作品は原色が多い気がするとのことでした。そのような心理状態下では、ストレートなやや鋭い色の方が、淡い色よりも良いと感じるのかもしれません。感覚的なことだとは思いますが、面白い気づきだと思います。
美術、音楽、そして言語など目に見えない「心持ち」が形になるときというのは、そのときの心の状態が素直に表面化されるのでしょう。だからこそ、様々な状態から生まれたものを、様々な状態で受け止めた結果、人によって、または同じ人でもその瞬間の状態に応じて、同じものを美しいと感じたり、好みではないと感じたりするのかもしれません。
言語を扱う者として、また、日常的に言葉を使うということにおいても、良い心の状態でいられるよう、そして同じ状態をキープしていられるように、日々過ごしたいと思います。
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